不景気でも業績が安定?――決算書に潜む「逆行の違和感」

他粉飾に関する事

一般的に、企業の業績は景気の波に大きく左右されます。しかし、世の中の流れと明らかに逆行する動きが決算書に表れていたら、それは「安定」ではなく「危険信号」かもしれません。

大規模な経済危機や自然災害発生時は売上高が減少する

2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災、2020年の新型コロナウイルス、約20年の間に3度の大規模な自然災害や経済危機が企業経営に影響を与えました。

それらの発生時に多くの企業からご相談をいただきました。リーマンショック時には、製造業を営む企業から「売上高が半減した」、建設系の企業から「今まで月商800万円だったのが8万円になってしまった」、イベント関係の企業は東日本大震災でイベント自粛の流れを受け数億円の売上を失い、致命的な打撃を受けたなどです。

コロナ禍なら感染防止関係の商品はよく売れたでしょうが、そんな業種はごく一部であり、多くは売上高を減少させました。

決算書への影響は

景気悪化局面では決算書の内容が大きく悪化します。しかし、なぜか影響が出ていない決算書を見つけるかもしれません。

周囲が苦境の中、決算書に影響が出ていない不自然

それら危機的状況にもかかわらず業績が安定している、それほど影響がないような決算書には注意が必要です。

同業者、主力仕入先・販売先の売上が大きく落ち込んでいるにもかかわらず、その企業だけ増収となっていたら、それは粉飾決算の疑いが濃厚です。

決算書の内容が良かったからといってそれを鵜吞みにはせず、「なぜコロナ禍で増収しているのだろか」「同業者、取引先が苦戦しているのに増収はおかしい」といった、決算書の違和感に気付くようにしてください。

「なぜ、この状況で増収が可能なのか?」という問いに対し、納得感のある合理的理由(独自の強みや特需など)があるかを確認してください。

これまでの粉飾を表面化するケースも

どこも業績が悪化している時だからと、この際、これまで行ってきた粉飾の膿を出し切り、決算書をきれいにしようとする動きも出てきます。どさくさに紛れて過去の不正をリセットするのです。

架空資産を消したことで急に売上債権や棚卸資産の回転期間の短縮化、固定資産なら減価償却を償却限度額まで計上、すでに存在しない固定資産を除却するなど、大きく動いた形跡が見られたらその結果かもしれません。

そういう企業の経営者は、落ち着いてきたら、また粉飾決算に手を染める可能性がありますから、継続的に警戒したほうがいいでしょう。

同業者と違う動きには最大限の警戒を

最近は、アフターコロナで粉飾決算発覚後の倒産が目立っていますが、共通点の一つが「コロナ禍の業績安定」でず。業種にもよりますが、コロナ禍でほとんどの企業がコロナ前と比べて売り上げが落ち込みました。しかし、粉飾企業の多くはコロナ禍でも年商が増え続けている決算書を作成・提出していました。

経済危機や災害だけでなく、業界全体が縮小傾向にあるにもかかわらず業績が順調だとしたら、それだけの強みが企業にはあるでしょうか。もし同業者とそれほど差がないのなら、粉飾決算を疑ったほうがいいです。

異常を見抜くためのステップ

業界全体が縮小している中で、特定の企業だけが順調であるなら、以下の対応を検討すべきです。

  1. 財務分析: 過去数年の推移から異常値(不自然な資産の膨らみ等)を特定する。
  2. ヒアリング: 経営者に業績の裏付けを直接確認する。
  3. 実地確認: 例えば在庫(棚卸資産)の現物を実際に確認させてもらう。

「同業者とそれほど差がないはずなのに、数字だけが良い」――この違和感こそが、リスク回避の第一歩となります。

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