融資担当者として業務に携わっているうちに、粉飾決算が疑われる決算書に出会うことがあるかもしれません。その時は次のように対応しましょう。
粉飾決算を見つけたら
粉飾決算を見つけたとしても、もしかしたら間違いかもしれません。経営者に疑いをかけたものの、間違っていた場合は大きなトラブルになります。慎重に対応する必要があります。
上司にも確認してもらう
まずは自分の判断に間違いがないか上司にも確認してもらいます。その場で粉飾が明らかになるかもしれませんが、それだけでは確定できないでしょうから、疑問点を経営者へのヒアリング、説明書類提出等の指示があるでしょう。
粉飾を指摘する際は役席同行で
しかし、説明や追加資料からしてもやはり粉飾で間違いないという事であれば、経営者に面談して直接確認することになります。
粉飾を経営者に指摘する際は、担当者1人ではなく必ず役席にも同席してもらってください。1人で指摘するのは避けましょう。
経営者の平均年齢は60歳程度と高齢です。いくら粉飾を行った経営者が悪いとはいえ、自分の子供と同じような年齢の行員から、自身の起こした不正について指摘されるのは辛いものです。
そこで支店長や融資課長等の役席なら、経営者との年齢もまだ近いですし、肩書を持った行員から指摘されたほうが認めやすいでしょう。
また、粉飾という言葉は極力避けるようにしてください。できれば「本当の数字を教えてください」等と柔らかい表現を使ったほうがいいと思います。それでほとんどの経営者は粉飾が見つかったことに気づくはずです。
責めるような対応は避ける
長年、騙し続けてきたと思うと裏切られたと感じるでしょうが、責め立てるような言動は避けてください。なぜなら、それでは経営者は逃げ場がなくなってしまいます。かえって粉飾を認めなかったり、認めても粉飾前の数字を公開することに非協力的になってしまうかもしれません。
経営者は銀行からの融資が絶たれることを非常に恐れています。
いくら根拠があって今後の見通しが好転すると説明しても、「直近の決算内容が悪かったので、しばらく様子を見たいです」等と言われてきたかもしれません。過去の実績を重視され続けてきた経営者を思えば、粉飾に手を出す気持ちも少しは理解できるでしょう。
だからこそ、「社長は誰にも相談できず辛かったと思います」と経営者の気持ちに理解を示すようにしてください。
顧問税理士に協力依頼
粉飾決算を行ったのは経営者であっても、顧問税理士は関与しているか、していなくとも知っている存在です。
粉飾を止めさせるべき立場にある税理士が言えない理由としては、税理士の業界もかつては企業から依頼されて税務を指導する立場にありました。しかし、現在では選ばれる立場にあり、経営者の意にそぐわない対応を取ればすぐに顧問契約解除をされてしまいます。特に東京や大阪などの大都市では税理士の数が多く競争が進んでいます。
そうなると、「融資に影響が出ないよう、銀行の受けがいい決算書を作ってください」」との依頼を受けてしまえば、応じざるを得ない税理士が多くいるのが現状です。
おそらく嫌々引き受けていると思います。したがって、そのような立場を理解し、粉飾する前の数字にするよう依頼します。そして、今後については粉飾決算しないことを約束してもらってください。ほとんどの税理士が理解を示してくれるはずです。
しかし、一部の税理士はそれに非協力的であったり、粉飾決算をサービスの1つと考えていたりします。
もし顧問税理士がそのような方であれば、こちらは融資先の支援がやりづらいため、税理士を紹介することも可能ではあるかと思います。ただ、あまり銀行側から税理士変更を働き掛けるのはトラブルに発展するリスクもあるので慎重にしましょう。
税理士が適切な会計処理によって作成された財務書類の提出に非協力的なら、融資先には金融支援には協力できないことを伝えるといいでしょう。そうすれば経営者から税理士紹介依頼があるでしょう。
今後の支援について
粉飾された決算書では実態の数字が全く分かりませんから、後の支援が可能かどうかを判断することができません。
粉飾前の決算書(実態)を作成してもらう
まずは粉飾する前の決算書を作成してもらいます。本当の数字を見ることで経営悪化がいつ頃から始まったのか、何が原因なのかが分かります。
大きな原因としては売上減少や利益率低下でしょう。さらに無駄な経費の存在等の問題点が見つかるはずです。
実態は明らかになったら、融資先には改善の具体策や予想損益計算書や貸借対照表、キャッシュフロー計算書、返済計画等を作成してもらいます。
融資先も悪化の原因が明確になれば、経営改善策を策定しやすくなるでしょう。もし計画書作成が苦手なようでしたら、専門家の紹介や計画内容のチェックをしてください。
自行として支援可能か
銀行は融資先から提出された経営改善計画書の内容を精査します。計画内容が実現可能性の高いものなら返済額軽減で資金繰りを支援しながら、返済再開ができるよう支援を継続しましょう。
粉飾決算の発覚やリスケジュール中では、追加融資は極めて困難かと思いますから、資金繰りを見て返済額調整で支援していきましょう。
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